創作– category –
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File.XⅢ Down,down,down
「春休み中にどっか行こうよ」 卒業式を終えた午後。制服姿そのままで学校の最寄り駅のビルでのランチ。 受験生らしく遊びに行くこともせずに過ごしていたのと、バレンタインの後からこのビルが全館改装していたこともあって、ここに寄り道するのも久... -
File.12 うさぎはここにはいないヒト
「怪我の具合は?」「んー……どうだろ。鬼ごっこはしたくないかも」なにをさせるつもりなのかと向かいの男を窺うように見るも、ホットケーキの蜂蜜とバニラエッセンスとの香りに警戒はすぐにほどけ、幸福感に浸ってしまう。出会った頃。なにを出されてもろ... -
File.11 うさぎはしごとをえらべない
なんで今この時なのかと歯がみする。最優先事項は”うさぎ”であり”瀬谷透子”のはずだ。そのように段取りをつけ、上にも報告してあった。それなのに、ここぞというタイミングで横槍が入るなどどうかしている。 フィクションの世界ならば違法行為を連発して... -
File.10 うさぎはうさぎになりにいく
『急ぎで耳にお入れしたいことが』 東から報告のコールが鳴ったのは、透子が風呂に入り始めてすぐのことだった。 -
水晶森の咎人 / 幕間2 葬いの夜
「助けてください!」 悲痛な声と共に蹴り飛ばしたのかと思えるほどの勢いで扉が音をたてて開いた。 息を切らして駆け込んできた女の腕の中には、服が焼け焦げ、皮膚すらも爛れ過ぎてめくれ剥がれているような子どもが抱えられている。何も訊かずとも、... -
File.09 うさぎはだんここうぎする
ベッドがある。 案内された部屋で真っ先に思ったのはそんなことだった。