水晶森の咎人

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水晶森の咎人 / 幕間2 葬いの夜

「助けてください!」  悲痛な声と共に蹴り飛ばしたのかと思えるほどの勢いで扉が音をたてて開いた。  息を切らして駆け込んできた女の腕の中には、服が焼け焦げ、皮膚すらも爛れ過ぎてめくれ剥がれているような子どもが抱えられている。何も訊かずと...
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水晶森の咎人 第1章 偽りの願い1

 少女は馬の背に揺られていた。もっともその形相は『揺られている』と表現できるような呑気さはなく、緊張を張り付かせて強張っていた。何しろ細い手首は麻縄でしっかりと縛られているのだ。いざというときに体のバランスをとることすらままならない。  ...
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水晶森の咎人 第1章 偽りの願い2

← 第1章 偽りの願い1      久方ぶりに訪れたこの家の掃除も、昨日から黙々と取り組んだお陰で一通り終わってしまった。大概食事を摂るべきだと頭の片隅で考えつつも、何か食べたいかといえばやはりそんな気分にもならない。だから、内容など...
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水晶森の咎人 第1章 偽りの願い3

← 第1章 偽りの願い2  少女の前に現れたのは、白く大きな犬だった。音もなく駆けてきたその犬は、彼女を庇うように立ち、男たちに身構えている。 「野犬……か?」  ひょろりとした男が誰に問うでなく呟くように言うと、猫背の男は剣を薙...
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水晶森の咎人 幕間1  追憶の午後

← 第1章 偽りの願い3   「七年、ですな」  白いものが混じり始めた顎髭をひと撫でした男は、眼下を見遣った。 「……そうだな。早いものだ」  隣の男と同じようにバルコニーの下を行き交う人々を見ながら、彼もしみじみと呟くように答...
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水晶森の咎人 第2章  甘くて苦い想い出 1

← 幕間1  追憶の午後 --------------------------------------------  ソルは出窓に腰掛けて、手にした羽を見つめていた。指先でくるくると弄ぶそれは、今となってはただの羽だ。  【...
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水晶森の咎人 第2章  甘くて苦い想い出 2

← 第2章  甘くて苦い想い出 1 --------------------------------------------    階下に降りると、廊下は綺麗に磨かれていた。ドアを開けば、昨日は水浸しで足を踏み入れるのも躊躇われた床も...
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水晶森の咎人 第2章  甘くて苦い想い出 3

← 第2章  甘くて苦い想い出 2 --------------------------------------------    裏庭で洗濯物を干していたフィラは、さえずりに誘われるようにその手を止めて空を見上げた。すべてを包み込む...
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水晶森の咎人 第2章  甘くて苦い想い出 4

← 第2章  甘くて苦い想い出 3 --------------------------------------------    洗濯物を干し終えて家に入ると、室内は甘い匂いに満たされていた。途端に空腹を訴えるおなかをそっと撫でなが...
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水晶森の咎人 第2章  甘くて苦い想い出 5

← 第2章  甘くて苦い想い出 4 --------------------------------------------    なかなか減らない菓子を前にフィラがお腹をさすり始めた頃、ソルは森のはずれで馬の背に揺られて...
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