Alice.dat– category –
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File.XⅢ Down,down,down
「春休み中にどっか行こうよ」 卒業式を終えた午後。制服姿そのままで学校の最寄り駅のビルでのランチ。 受験生らしく遊びに行くこともせずに過ごしていたのと、バレンタインの後からこのビルが全館改装していたこともあって、ここに寄り道するのも久... -
File.12 うさぎはここにはいないヒト
「怪我の具合は?」「んー……どうだろ。鬼ごっこはしたくないかも」なにをさせるつもりなのかと向かいの男を窺うように見るも、ホットケーキの蜂蜜とバニラエッセンスとの香りに警戒はすぐにほどけ、幸福感に浸ってしまう。出会った頃。なにを出されてもろ... -
File.11 うさぎはしごとをえらべない
なんで今この時なのかと歯がみする。最優先事項は”うさぎ”であり”瀬谷透子”のはずだ。そのように段取りをつけ、上にも報告してあった。それなのに、ここぞというタイミングで横槍が入るなどどうかしている。 フィクションの世界ならば違法行為を連発して... -
File.10 うさぎはうさぎになりにいく
『急ぎで耳にお入れしたいことが』 東から報告のコールが鳴ったのは、透子が風呂に入り始めてすぐのことだった。 -
File.09 うさぎはだんここうぎする
ベッドがある。 案内された部屋で真っ先に思ったのはそんなことだった。 -
File.08 うさぎはうっかりなつかしむ
正直なところ、透子の部屋に入ることはもうないだろうと思っていた。恋人関係は自然消滅。彼女の狭い行動範囲を考えれば、顔を合わせることもまずないだろうし、うっかり逢ってしまったところで彼女は他人のフリですれ違って、関係の終わりをひとり納得する気がした。