緋欠片

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満月の誘惑

「あ!」  声をあげた珠紀が、「見ましたか?」と目を輝かせて問いかけてくる。 「おぅ。……こっち見てないで、空見とけ。願い事すんだろ?」  そう言って真弘が空を見遣ると、またひとつ星が流れた。  心の中で、願い事をひとつ。  隣を...
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記憶の欠片 第5章 護る決意 守られる覚悟

「赤点はないと思うんですけど……」  午前中で定期テストを終えた学生組にその出来を確認した卓に、珠紀は肩を竦めて答えた。  久しぶりに全員で歩く、学校からの帰り道。制服のまま軽口を叩きながら肩を並べるその光景は、日常のそれだ。いつもと違...
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記憶の欠片 幕間 月明かりの部屋

 明日の決行を珠紀が報告に来たのは、先ほどのことだ。  玉依姫の術を教えて欲しいと言って伏した時とは違う、何かがふっきれた強い目をしていた。   『私たちふたりで決めたことです』    鬼斬丸の封印の儀を行おうとしたあの日。  ...
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吸血姫 VS 狼男

「”今日の俺はクリスタルだぜ!”」 その台詞を耳にするのは、今日はもう4回目だ。 あと1話でこのDVD収録分はすべて見終わるけれど、この分ならもう1枚位は見るに違いない。 珠紀の夏休みが始まってすぐの頃、真弘が買ったDVDセット【クリ...
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梅雨晴れ 青空 白熊日和

 なんの罰ゲームだこれは。  そう思ってはみたものの、実際は罰ゲームでもなければ、誰かに強制されたわけでもない。  早く渡してしまえばそれで済むはずだったのに、今日に限って珠紀がなかなか現れないばっかりに、真弘は先ほどから校門から出てく...
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記憶の欠片 第4章 守護者の力

 うつ伏せたまま、意識がゆるりと浮上する。  目覚ましを止めたのはなんとなく覚えているし、確か親も起こしに来た。あれからひと眠りしたから、既に遅刻確定の時間だろう。それならもう今更焦る必要はない。  今日は、珠紀は学校に来るだろうか。 ...
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記憶の欠片 幕間 選択肢のない選択

「私ね先生に会うまで、この村が大嫌いだった」  川縁の草の上に座った彼女の横顔を、夕焼けが鮮やかに照らす。少し眩しそうに目を細めた彼女は、懐かしむような笑みを浮かべて言葉を続けた。 「高校生になって、先生が村に来たじゃない? そしたら先...
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最後の時間

「なんか、すっごく長くこの村にいた気がします」 陽射しを仰いだ珠紀は、両手を後ろ手に組んだまま振り向き真弘に微笑んだ。 両脇は畑の1本道。舗装されていないその道を、ふたりはゆっくり歩いていた。 「そうか? 俺は、あっという間だった気が...
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hot line

 びくりと体が揺れて目が覚める。  ああ、夢だ。  ゆるゆると息を吐き出しながら安堵するのに、先ほどまでの余韻か、胸が重苦しいまま拍動が全身に響いていた。  大丈夫。ただの夢。  そう言い聞かせて、珠紀はそっと体を反転させた。  ...
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たいやき戦争

 きっかけは、クリーム鯛焼きだった。  鯛焼きを食べて帰ろうという拓磨に、商店街の鯛焼き屋は、今の季節はあんこの鯛焼きしか売ってないから行きたくない、と答えた。  すると拓磨は、あんこがあれば十分だと主張し、だってクリームの方が好きなん...
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