緋欠片, 記憶の欠片

 それはどこか懐かしく、そして切ない光景だった。
 夕闇を照らす無数の蒼く儚い光。そのひとつひとつが、誰かの想いだということを、今の珠紀は知っている。
 玉依姫への恨みの言葉も、なぜ自分が死なねばならなかったのかという ...

緋欠片, 記憶の欠片

「赤点はないと思うんですけど……」
 午前中で定期テストを終えた学生組にその出来を確認した卓に、珠紀は肩を竦めて答えた。
 久しぶりに全員で歩く、学校からの帰り道。制服のまま軽口を叩きながら肩を並べるその光景は、日常の ...

緋欠片, 記憶の欠片

 明日の決行を珠紀が報告に来たのは、先ほどのことだ。
 玉依姫の術を教えて欲しいと言って伏した時とは違う、何かがふっきれた強い目をしていた。
 
『私たちふたりで決めたことです』
 
 鬼斬丸の ...

緋欠片, 記憶の欠片

 うつ伏せたまま、意識がゆるりと浮上する。
 目覚ましを止めたのはなんとなく覚えているし、確か親も起こしに来た。あれからひと眠りしたから、既に遅刻確定の時間だろう。それならもう今更焦る必要はない。
 今日は、珠紀は学校 ...

緋欠片, 記憶の欠片

「私ね先生に会うまで、この村が大嫌いだった」
 川縁の草の上に座った彼女の横顔を、夕焼けが鮮やかに照らす。少し眩しそうに目を細めた彼女は、懐かしむような笑みを浮かべて言葉を続けた。
「高校生になって、先生が村に来たじゃ ...

緋欠片, 記憶の欠片

「主来たれり」
 唱えて押した扉の向こうは真っ暗で、少し不気味に感じる。
 懐中電灯で照らしながら、電気くらいは設置すべきかもしれないなどと考えつつ、珠紀は棚の間を歩く。
 和綴じの背表紙に文字のない書物も多い ...

緋欠片, 記憶の欠片

 鬼斬丸という頸木がなくなった今、あの異形の力を檻に留めておくものはない。
 だから急ぐべきなのだ、と男は主張した。
 最初に狙われるのは、玉依姫と守護者のみ。
 自信ありげにそう断言し、あれらを消し去ったら、 ...

緋欠片, 記憶の欠片

 昼休みを告げるチャイムが響き、一目散に教室を飛び出した珠紀は、屋上へのドアを前に深呼吸をひとつ。
(先輩、もう来てるかな?)
 早く逢いたくて駆けてきたのに、そのドアの向こうに真弘が居るかも知れないと思うと、ノブを回 ...

緋欠片, 記憶の欠片

 ここまで確実に追ってきたはずの気配が、突然かき消すように途絶える。こんなことはもう何度もあった。
「ちっ、見失ったか」
 舌打ちをして、周囲を見渡すが、あの独特の暗く淀んだ気配も匂いもなく、ただカミ達のささめく気配と ...

緋欠片, 記憶の欠片

訊いてみたいことがある。
 
怖くて言い出せずにいること。
 
傍にいてもいいですか?
 
先輩は『玉依姫』を──
 
 
 
 
 
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