記憶の欠片

緋欠片

記憶の欠片 終章

 それはどこか懐かしく、そして切ない光景だった。  夕闇を照らす無数の蒼く儚い光。そのひとつひとつが、誰かの想いだということを、今の珠紀は知っている。  玉依姫への恨みの言葉も、なぜ自分が死なねばならなかったのかという嘆きも確かに在った...
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記憶の欠片 第5章 護る決意 守られる覚悟

「赤点はないと思うんですけど……」  午前中で定期テストを終えた学生組にその出来を確認した卓に、珠紀は肩を竦めて答えた。  久しぶりに全員で歩く、学校からの帰り道。制服のまま軽口を叩きながら肩を並べるその光景は、日常のそれだ。いつもと違...
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記憶の欠片 幕間 月明かりの部屋

 明日の決行を珠紀が報告に来たのは、先ほどのことだ。  玉依姫の術を教えて欲しいと言って伏した時とは違う、何かがふっきれた強い目をしていた。   『私たちふたりで決めたことです』    鬼斬丸の封印の儀を行おうとしたあの日。  ...
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記憶の欠片 第4章 守護者の力

 うつ伏せたまま、意識がゆるりと浮上する。  目覚ましを止めたのはなんとなく覚えているし、確か親も起こしに来た。あれからひと眠りしたから、既に遅刻確定の時間だろう。それならもう今更焦る必要はない。  今日は、珠紀は学校に来るだろうか。 ...
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記憶の欠片 幕間 選択肢のない選択

「私ね先生に会うまで、この村が大嫌いだった」  川縁の草の上に座った彼女の横顔を、夕焼けが鮮やかに照らす。少し眩しそうに目を細めた彼女は、懐かしむような笑みを浮かべて言葉を続けた。 「高校生になって、先生が村に来たじゃない? そしたら先...
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記憶の欠片 第3章 3度目の口づけ

「主来たれり」  唱えて押した扉の向こうは真っ暗で、少し不気味に感じる。  懐中電灯で照らしながら、電気くらいは設置すべきかもしれないなどと考えつつ、珠紀は棚の間を歩く。  和綴じの背表紙に文字のない書物も多いこの中から、必要な情報を...
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記憶の欠片 幕間 正義の規範

 鬼斬丸という頸木がなくなった今、あの異形の力を檻に留めておくものはない。  だから急ぐべきなのだ、と男は主張した。  最初に狙われるのは、玉依姫と守護者のみ。  自信ありげにそう断言し、あれらを消し去ったら、そのままあのカミも結界で...
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記憶の欠片 第2章 当代玉依姫

 昼休みを告げるチャイムが響き、一目散に教室を飛び出した珠紀は、屋上へのドアを前に深呼吸をひとつ。 (先輩、もう来てるかな?)  早く逢いたくて駆けてきたのに、そのドアの向こうに真弘が居るかも知れないと思うと、ノブを回す手が止まる。 ...
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記憶の欠片 幕間 甘い匂い

 ここまで確実に追ってきたはずの気配が、突然かき消すように途絶える。こんなことはもう何度もあった。 「ちっ、見失ったか」  舌打ちをして、周囲を見渡すが、あの独特の暗く淀んだ気配も匂いもなく、ただカミ達のささめく気配と森の静寂があるばか...
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記憶の欠片 第1章 空白の記憶

訊いてみたいことがある。   怖くて言い出せずにいること。   傍にいてもいいですか?   先輩は『玉依姫』を──                * * *         「真弘先輩」 「ん?」 ...
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