カノジョの婚活

とうらぶ

カノジョの婚活 8

← とうらぶ目次へ戻る        そう仕向けたのは自分ではあったが、この女はこんなんで大丈夫なのかと煙草の煙を吐き出しながら思う。    婚約者と住むため。  それはあの家を出るにはひどく都合のいい免罪符だった。いい...
とうらぶ

カノジョの婚活 7

← とうらぶ目次へ戻る   「食べられないものはないですか?」 「はい」  頷くと「よかった」と男は微笑んだ。  長袖シャツにエプロンをする姿は前世でも目にした姿であったはずだけれど、現代の、しかも他人様の家のキッチ...
とうらぶ

カノジョの婚活 6

「俺と結婚しようじゃないか」  あいつはどんな言葉で彼女にそれを乞うたのか。  そんなことを思いながら口にした言葉に目を丸くした女はデザートスプーンを取り落とした。柔らかな絨毯の上に落ちたそれは音を立てることもなく、けれども目端の利...
とうらぶ

カノジョの婚活 5

 瞼の向こうはうっすらと明るい。もう夜が明けてるんだろうか。それなりの時間寝たような気もするけれど、ろくに眠っていないような倦怠感がある。頭はひどく重く、指先を動かすのも、目をあけるのすら億劫だった。  眠る前の記憶を手繰り寄せれば、今は...
とうらぶ

カノジョの婚活 4

 セックスの後、彼女がこんな風に寝入るのは初めてのような気がする。大きな枕を抱えるようにうつ伏せて、身じろぎひとつしない。上下する剥き出しの肩もひどく微かで、ともすればこのまま呼吸まで止まるのではないかという儚い動きを横目に、深く吸い込んだ...
とうらぶ

カノジョの婚活 3

「……ある、じ?」  彼の声以外、全部の音が消えた気がした。  ドクン、ドクン、と心臓が自身の存在を主張するように体の内から痛いほどに響く。  はくりと唇を動かして。けれども音にはならないままに、呼吸するのも忘れていたことに気付い...
とうらぶ

カノジョの婚活 2

 婚活開始を宣言してから、一ヶ月が経った。元々気まぐれな呼び出しに私が応じた時だけ、ヤるだけの関係だ。それが日常から欠けてなくなったところで日々はそれほど変わりはない。ない、はずだった。なのに、仕事が終わる頃にスマホが震えるとつい彼の顔がよ...
とうらぶ

カノジョの婚活 1

「は? もう一回言ってくれ」    裸でベッドボードに寄りかかる男は煙を吐き出し半笑いでそんなことを言う。まあそうだろう。切るか切られるように仕向けることはあっても、相手から切られたことなんてこれまで一度だってなかったはずだ。   ...
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