記憶の欠片 第3章 3度目の口づけ

 柔らかかった、などと思う。
 そんな状況ではなかったはずなのに、触れた唇の感触は鮮明に思い出すことができる。
 やきそばパンをかじりながら、初めて味わった感触を思い返していると、慎司が真弘の手元を覗き込んで「真弘先輩がプリンなんて珍しいですね」と笑った。
「た、たまにはこういうガキっぽいものが食いたくなる時もあんだよっ」
「そうなんですか? てっきり珠紀先輩に買ってきたのかと思いました」
「ばっ、ちげーよ! ま、あいつがどぉぉしても食いたいって頼むなら、やらないこともないけどな」
 珠紀が気に入っているこのプリンは、購買部では入荷量が少なくなかなかに入手困難だ。
 真弘がこれを買ったのは、いつもよりも急いで行った購買部で、たまたまこれがあったからだ。あくまでもあったから買っただけで、別にプリンの為に急いだわけではない。
 ただ──急いで行けば、あるだろうとは思っていた。
 欲しがったらくれてやる。
 そんな風に思いながら、先ほどからドアの方をちらちらと見ているのに、今日に限って珠紀はなかなか屋上にやってこない。同じクラスの拓磨もまだ来ないということは、授業が長引いているのかもしれない、などと考えているとドアが開いて拓磨がやって来た。
 ほんの少し身構えた真弘だったが、一緒に来るだろうと思っていた珠紀の姿はそこにはなかった。
「おい、珠紀はどうした? 便所か?」
「休みっすよ。今朝は大蛇さんとこに送ってったんで」
 真弘のはす向かいに座った拓磨は、パンの袋を開けながら、珠紀が術の使い方を習うと言って張り切っていたのだと付け足した。
 昨日のことが堪えているんじゃないだろうか、とか、今日は会ったらどんな顔をすればいいのか、などと真弘なりにあれこれ考えていたのに、休みと聞けば拍子抜けしてしまう。
「昨日の今日で元気な姫さんだな。あんだけ出来れば十分じゃねえか。あとは守られてりゃいいだろ」
「そうっすね。それがあいつのいい所で、悪い所なんじゃないすか?」
 拓磨の言葉に、昨日の珠紀の様子を思い出し、つくづく変わった玉依姫だと考えながら、真弘はやきそばパンの残りを口に押し込んだ。

 昨日のこと。
 必死な様子でオサキ狐が教室に飛び込んできたのは、6限目の授業が始まってしばらしくしてからのことだった。
 板書の好きな教師がやたらと書いては線をひくあれこれを、真弘が欠伸をかみ殺しながらノートに写していると、駆け込んで来た白い獣は姿勢正しく熟睡していた祐一の机に飛び乗った。
「ニッ!」
 明らかに様子のおかしいオサキ狐の姿に、校内に在るはずの珠紀の気配を探るが、どこにも見つからない。
「──!?」
 椅子をひっくり返さんばかりの勢いで立ち上がった真弘に、教室中の注目が集まったがそんなことには構っていられなかった。
 祐一も、オサキ狐としばし見つめ合った後、すぐに立ち上がると、真弘と共に教室を飛び出した。
「やられたな。典薬寮の人間に連れ出されたらしい」
「典薬寮!?」
 真弘と並んで廊下を走る祐一が、「他の守護者も呼んだ方がいい」と抱えたオサキ狐に言うと、その腕からするりと抜け出した使い魔は、別の方向へと走り出した。
 そうして走る間にも、珠紀の気配を探るが見つからない。守護者が玉依姫の気配をまったく掴めないなど常ならばあり得ないことで、最悪の事態も頭を過ぎる。
「場所はわかんのか!?」
「途中までは。とにかくそこに向かおう」
 風を呼び寄せ全力で駆けながら、真弘は「すぐ行くから、死んでんじゃねえぞっ」と気配の掴めない珠紀へと念じるように呟いた。

 祐一の先導でたどり着いた場所には、珠紀の気配はなかった。
 しかし、離れた場所に妙な力の蠢きがあるのを感じて、可能性に賭けるように真弘たちはそちらを目指した。
「待て、真弘。おかしいと思わないか?」
 カミとは異質の妙な気配は、かつて鬼斬丸が封印されていた沼のあたりに在る。
 そこを目指して鬱蒼と茂る木々の間を駆けていたふたりだが、ふと祐一が足を止め、周囲を見回した。
「あ?」
「カミの気配がない」
 封印域を超えて、沼はもうすぐそこだ。
 かつては異界として存在していた森も、宝具がなくなり、鬼斬丸が破壊されてからは普通の森だったはずだ。記憶を失って以降、妖を探して足を踏み入れたことがあったが、その時とではずいぶんと様子が違う。
「……罠、ってことか」
「その可能性が高い」
 異界ではない。けれど、普通の森でもない。
 どこか息苦しさを憶える圧迫感に周囲を見回すが、おかしなところは特にない。しかし、なにかが決定的に歪んでいるようにも感じられる。
 常ならば、そこかしこに感じるはずのカミの気配がひとつも感じられないのも、その異様さに拍車をかけていた。
 ふいに沼の方で、なにか大きな気配が動いた。同時に、これまでまったく見つけられなかった珠紀の気配を、そこに確かに感じられた。
「上等だっ! 罠なら罠でブッ潰す!」
 すぐさま風を纏って走りだした。しかしその足は、常よりも遥かに重く感じられ、空気はまとわりつくようだ。
 それでも珠紀の気配目指して駆けたふたりは、木々が開けた沼の手前で再び足を止めた。
 白く霧が立ちこめるその場所。
 沼の近くには、大勢の人の気配があった。明確に人の姿を為している者もいれば、ただ黒く影のように漂うものもある。
 その人垣の向こうに、いつかの灰色頭の男に担がれた珠紀の姿があった。
「幻覚……か?」
「残念ながら、幻覚じゃない」
 目の前にいる大勢の人影。珠紀の元にたどり着くには、この人垣を蹴散らさなければならない。
 突破すべく駆け出そうとした真弘の耳に、ざわざわと無数の声が届いた。
『殺せ』
『殺せ』
『玉依姫を殺せ』
 低く響くその声に宿るのは、どれも殺意や敵意、憎悪ばかりだ。
 ふいにその人垣の中から、『贄の子がいるぞ』と声があがった。
 目の前にいる者たちの注意すべてが、こちらに一斉に向けられたのを真弘は全身で感じた。
『贄の子』
『なぜお前が生きている』
『なんで俺が死ななくてはならなかった』
『死ね』
『お前こそが死ぬべきだった』
『贄の子を殺せ』
『真っ先に死ぬべきはお前だった』
 ざわめき全てが、真弘への殺意に塗り替えられていく。
 背中に冷たい汗が伝った。
 彼らがなんなのか。考えるまでもなく、真弘にはわかった。真弘を『贄の子』と呼ぶこれらはすべて、贄の儀で命を落とした者たちだ。
 明確な殺意を向けてくる彼らは、知っているのだろう。真弘こそが、封印の贄として本来捧げられるべき者だったのだと。
 糾弾する声が響き、溢れて、真弘の胸を抉る。
 お前が早くに死ねば、これほど多くの者が殺されずに済んだのだと、彼らの眼差しは一様に語っていた。
 否応なく引きずり出される罪悪感に、身じろぐことすらできない。
「真弘っ!」
 強く腕を引かれて我に返ると、そのすぐ横を強い力が走り抜け、真弘の制服の袖を裂いた。
 周囲に視線を走らせた祐一は、真弘の腕を掴んだまま尋ねる。
「力は使えるか?」
「やるしか、ねえだろうな」
 ここにいるのは鬼斬丸の犠牲者だ。力を振るうのは気が進まないが、それでも、とにかく珠紀だけは助け出さねばならない。
 答えた真弘は、その手に力を集めようと集中した。しかし、集まりかけた風は、すぐに霧散してしまう。
「同じ、か……」
 呆然と己の左手を見つめる真弘にため息を落とした祐一は、「どうやら守護者の力が使えないようだ」と呟くように言った。
 その間も、ひっきりなしに『殺せ』という声が人垣の中からあがる。
 珠紀たちを取り囲む人の輪は徐々に小さくなり、真弘たちにもそれは迫っていた。
 風を集めることのできない左手に目を落としながら、しばし考える。
「なぁ、祐一」
「なんだ?」
「幽霊って殴れると思うか?」
「……やってみるしかないだろう」
「……だな」
 目で合図をして、互いに頷く。
 力強く地面を蹴って、ふたりは珠紀の元へと駆けだした。
 力は使えなくとも、カミの血をひく守護者たちは根本的に身体能力が常人を超えている。
 追いすがり、掴みかかってくる無数の手を振り払い、立ちはだかる者には拳を突き出した。どこからか発せられる攻撃が、時折皮膚を切り裂いたが、致命傷でなければ構わなかった。
 輪の中心にたどり着く頃には、傷だらけになりはしたものの、戦えないほどのケガは負わずに済んだ。
 軽くあがった息のもと、駆け寄ったふたりに真っ先に投げられたのは「遅ぇんだよ」という男の言葉だった。
「先輩!」
 男の肩に荷物のように担がれた珠紀から声があがるのを耳にして、真弘はようやく安堵した。
「おまえがこいつを攫ったってんじゃなさそうだな」
「ふん、助けているように見えなかったか?」
 鼻を鳴らした男──狗谷は、雑な仕草で珠紀を地面に下ろした。
 狗谷と祐一とが周囲の攻撃に備える中、真弘はすかさず珠紀の足首と手首に巻かれたロープを引きちぎり、その顔を覗き込んだ。
「ケガはねえな?」
「はい」
「ったく。ガキじゃねえんだから、知らない人間にホイホイついて行くんじゃねえっ!」
 手首にくっきりとついた縄の趾から血が滲み、痛々しい。少しふらつきながらも、しっかりと己の足で立つ姿に大きなケガはなさそうだと判断した真弘は、彼女を一喝すると周囲に視線を走らせた。
「そんなこと言ったって……」
「話は後だ。突破すんぞ」
 珠紀の手を取り、駆け出そうとした途端、周囲の霧が真弘達を中心に渦巻き出した。
 うねる力は周囲の人影を巻き込み、徐々にひとつの塊を形成していく。分散したものがひとつに集約され、まとまるごとに倍加していく力の集合体を、声もなく見つめた。
「先輩!」
「無事か!?」
 視界の端に、慎司と拓磨が駆けてくるのが見える。
 しかし、今は仲間の到着を喜んでいる場合ではない。
 息を呑み、その存在を凝視する。強大な力を宿すそれは、いつか珠紀が語った姿だ。
「フェレット……っすか?」
 傍まで来た拓磨がそれを見上げながら言うと、慎司もそれを見つめながら首を傾げた。
「かわうそにも見えますね」
「ばーか、あれはイタチだろ」
「フェレットだと思ったんですけど……違いましたか?」
 真弘の言葉に、珠紀が答えた。
「おいっ。今ここでそれは重要なのか!?」
 イライラとした口調で狗谷が言うのを無視するように、「フェレットはイタチ科だ。間違いではない」と祐一が珠紀に頷いた。
 そんな軽口を叩きながらも、皆一様に事態の深刻さはひしひしと感じているようで、緊張した面持ちだ。
「拓磨、慎司。おまえら力は使えるか?」
「駄目みたいです。ここに近づいた途端、言霊が全部無効化されました」
 守護者の力が使えないならば、今ここで目の前の化け物と戦う力は誰にもなく、おそらく逃げたところで逃げ切れるものでもないだろう。
 それでも、今この場での最優先事項は明確だ。
「しょうがねえな。とりあえず、こいつ逃がすぞ」
 視線で珠紀を示すと、すぐに彼女の口から抗議が上がった。
「そんな、先輩!」
「おまえは黙っとけ。フラフラした奴がいるのは、足手まといだ」
 珠紀の顔色は青いを通り越して真っ白だ。おそらく、こうして立っていられるのは、気を張っているからだろう。
 逃がすと言っても、全力で走ることすらできないかもしれない珠紀を、どうすれば逃がすことができるのか。
「でもっ、私だって……」
「……無理だと思いますよ」
 逃がす算段をする真弘に、拓磨が口を開く。
 まさかこの後輩の口から、無理などという単語が出てくると思いもしなかった真弘は、かっとして拓磨を睨め付けた。
「てめえ、拓磨っ! やる前から諦めるってのはどういう了見だっ!?」
「そうじゃなくて。逃げろと言って逃げてくれるような奴じゃないんで」
「は?」
「だろうな。こんなやりとりも時間の無駄だ」
「ですね」
 どうやら、祐一も慎司も、珠紀を逃がすという方向では考えていないらしい。
 だったらここは、このまま戦うしかない。
「ああそうかよっ! 珠紀っ! せめて下がっとけよっ」
「貸しにしておいてやる」
 舌打ちしながらも地面を蹴った狗谷と共に、守護者が一斉に打って出た。

 草の上には、途中で参戦した卓も含め、ぼろぼろになった守護者たちと狗谷とが点々と転がっている。
 いくら守護者が身体能力に優れているとはいえ、完全に力を使えない状態で、化け物を相手にするというのはさすがに無理があった。
 真弘の後方では、樹にもたれ掛かって座る珠紀が肩で息をしている。
 彼女は直接肉弾戦をしたわけではないが、オサキ狐に玉依の力を宿して、幾度も攻撃を仕掛けていた。元々フラフラだったのだから、立ち上がることも出来ないほどに消耗しているのは当然だった。
「くっそう……」
 いつの間にか化け物は消え去り、多くの人間が周囲を取り囲んで、口々に『殺せ』と言っていた。
 霞む視界で珠紀を見れば、彼女の体がほんのり淡く発光しているのがわかる。不思議な心地でそれを見ながら、なんとしても珠紀だけは守らなくてはと強く思った。
 しかし、倒れ伏している己の体を起こそうと腕に力を込めるが、それすらうまくいかない。
『殺せ』
『贄の子からだ』
『真っ先に死ぬべきは贄の子だ』
『本来贄になるべきものがそこにいる』
 周囲の殺意が、自分に向けられているのがわかり、真弘は少しホッとした。そうして肺から空気を絞り出すようにして、珠紀に「逃げろ」と叫んだが、うまく音にはならなかった。
 それでも、気付いた珠紀と一瞬視線が合う。伝わったはずだ。
 樹に体重を預けながら、よろよろと珠紀が立ち上がった。
『なぜ贄にならなかった』
『お前こそが死ぬべきだった』
『生きるなど許されぬ』
『お前が贄にならなかったばっかりに』
 糾弾する声が響き渡る。
 高まった声が力となり、真弘へと放たれた。迫り来るものを感じるが、避けようにも、体が言うことを効かない。
「させないっ!」
 凜とした鋭い声が響き、周囲を薙ぐように清浄な力が走った。
「殺させない。先輩のことも、皆のことも。生きていて悪いなんて、誰にも言わせないっ!」
『玉依姫め』
『ならば殺された我らはなんなのだ』
『殺された』
『死ね』
『殺せ』
『八つ裂きにしろ』
 ついさっきまで真弘に向いていた殺意は、すべて珠紀へと向かっていた。
 珠紀に視線をやれば、怯むことなく前を見据えて、再びその身の力を高めているのがわかった。
 生きていて悪いなんて誰にも言わせない、と。
 こんなに追い詰められた場面で言い放つ珠紀に、苦笑が漏れた。
 その発言が招いた窮状にすら、彼女は少しも怯むことがないのだ。
「バカな奴……」
 呟きながら、言い切ってくれた珠紀の言葉が真弘は嬉しかった。
 再び渾身の力を込めて、己の身を起こす。なんとしても、彼女のことは守りたい。
 そうしてどうにか起き上がりながら、ふとなぜ珠紀は守護者のように力を奪われていないのだろうかと考えた。
 同時に、玉依姫の力がこの場で損なわれていないというならば、活路を見いだす方法があるではないかと思い至る。
 ともすればふらつきそうになる足を励ましながら、珠紀へと歩み寄る。
「せんぱい……」
「これで終わりじゃ、格好つかねえだろ」
 そう言って不敵に笑った真弘は、彼女を引き寄せた。
「悪いな、珠紀」
 返答を待つことなく、真弘は自身の唇を彼女のそれに重ねた。
 ごめんなさい、と。
 囁くような珠紀の声を聞いた気がした。

「真弘先輩がプリンっすか?」
「自分用に買ったそうですよ。拓磨先輩」
 後輩たちは、目を見合わせて笑った。
「んだよっ! 俺様がプリンを食うのが、そんっなに面白いか? あぁ?」
「素直じゃないな、真弘。今日はチャイムが鳴った瞬間に教室を飛び出して行ったが……珠紀の為だったんだろう?」
「だから違うっつってんだろうがっ。それよりよぉ、こないだのあれ、根本的に間違ってたと思わねえか?」
 真弘はそう言いながら、食べる気のなかったプリンの蓋をめくった。クリームがのった見た目だけでなく、バニラエッセンスの香りがその甘さを存分に主張している。
「典薬寮の件っすか?」
「そうですね。昨日、珠紀先輩を連れ出してあんな場所に放り出したのが典薬寮の人間だとしたら、僕たちの考えは間違っていたってことになりますね」
 珠紀が守護者たちよりも先に、村で流行っている妙な病気のことを把握していたらしいことを知った真弘たちは、ひとつの仮説をたてていた。
 守護者に内密で玉依姫に接した典薬寮は、珠紀にあの妖を退治するように依頼したのではないか。
 表向き、典薬寮はこの村への干渉はしない取り決めになっている。
 しかし、その取り決めを支えていたのは、典薬寮の手には負えない鬼斬丸の存在があったからだ。それがなくなった今、彼らがこの村に干渉してくるのは、さして不思議なことではなかった。
 珠紀がやけにひとりで頑張っているのは、典薬寮になにかしらの交換条件を出されたのかもしれない。
 真弘たちはそう考えていた。
 しかし、昨日珠紀を連れ出した男が典薬寮を名乗ったならば、その仮定は根本的におかしいということになる。
「俺たちを殺すつもりなら、珠紀に接触して情報を与える必要はないからな」
「典薬寮と僕たちが組むのを都合悪く思っている誰かが、典薬寮を名乗ったというのも考えられますよね」
 慎司の言葉に沈黙が落ちる。
 いろいろ考えてみても、さしたる判断材料もないここで、結論など出るはずがない。
「だー、面倒くせえな。直接典薬寮の奴に訊けないのかよ」
「大蛇さんが手を打つと言っていた。もしくは、今日珠紀に直接訊いているかもしれない」
 誘導尋問は、あの男の得意とするところだ。
 その手に引っかかって、テストの点数や悪戯の首謀者であることを白状させられたことが、何度あったことか。
 今頃、珠紀も卓とふたりで昼食を摂っているのだろうか。ふたりきりで。
 真弘はなんとなく面白くない心地で、甘ったるい香りの中に乱暴にスプーンをつっこんだ。