相思花(鶴さに)

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「綺麗」
店先を冷やかしながら歩くうち、紅い曼珠沙華が咲き乱れる原っぱが現れた。摘んでいこうかと伸ばした手を、こらこらと白い袖が遮る。
「知ってるかい。この花には毒があるんだぜ」
「毒?」
改めて視線を巡らしてみても、咲いているのはただ綺麗なだけの花だ。毒なんて見た目からは想像も出来ない。
「世の中には見るに留めるべきものがあるのさ」
諭すような口調に顔を上げると、いつもは快活な光を湛える金色が寂しげに伏せられた。
「それは、花の話?」
「他に何がある。…そうだ。茶屋にもでも寄るか。きみは花より団子だろ」
垣間見せた何かを綺麗に仕舞い込んだ彼はこちらも見ずに歩き出した。引き留めるように、白い指先に指を絡め一方的に繋いでしまう。
「毒を食らわば皿までって言葉もあるよ」
「は?」
「あれ?この場合、毒は私?それとも鶴丸?」
私なんて毒にも薬にもならなそうな気もするけれど。考えていると、一瞬金色をまん丸に見開いた鶴丸は肩を揺すって笑い始めた。
「むぅ、なにその反応」
「いいや」
繋いだ手を口元に引き寄せた彼が口角を引き上げた。
「それで?喰われる覚悟は出来てるんだろうなァ?」

 
 
 


  
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