雪見だいふく 鶴さに

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パウーであげてたやつをちょっとだけ手直し。

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学校の帰り道。コンビニの駐車場。
日が傾いたとはいえ、風もないこんな日はじっとりとした暑さがまとわりついて立っているだけでHPが削られていく。

「ちょっと寄るからここで待っててくれるか?」

そう言って足早にコンビニへと入って行く背中を見送った。
一緒にお店に入れば冷房が効いていて涼しいに決まっているけれど、待っていてくれと言われた手前、店内に入るのもなんとなく気がひける。

「ほい、半分こだ」

ブラウスの襟元をパタパタと引いて、気休め程度の涼をとりながら待っていた私に差し出されたのはフタを取り払った雪見だいふくのパッケージ。
 
委員会で遅くなったから。方向が同じだから。そんな理由だけで一緒に帰るには烏滸がましいほどの相手。
その相手と雪見だいふくを半分こだなんて、まるで彼氏彼女……はさすがに言い過ぎでも、仲のいいふたりみたいで、思わず頬が緩みそうになる。
これでもう今学期の運は使い果たしたな。

「これは俺が持っとくな」
 
ホントに食べていいものかと迷う私などそっちのけで、ひょいと鞄が取りあげられ、代わりに白いパックが渡される。
 
「え、や、先輩、先にどうぞ」
「先に食ってくれ」
 
そうまで言われては断れない。
ひとつしかないピックはどうしよう。考えていると「俺は手で食べるからそいつはきみが使うといい」と空いた片手でひとつを摘まみ上げた。
倣うようにピックに刺したそれをかぷりと食む。
 
「!」
 
普通にバニラかと思いきや、爽やかな柑橘の香りが口いっぱいに広がる。先輩はといえば、悪戯を成功させた子どもみたいににんまりと金色の目を細めている。
なるほど、だからわざわざ蓋を捨ててから持ってきたんだろう。
 
「驚いたか?」
「はい、バニラかと思ったんですけど……おいしいです」
「そりゃよかった。きみとこうして半分こしてみたいとずっと思ってたんだ」
 
更なる驚きを投下した先輩は白磁の肌をほんのり赤く染めると、手にしたそれを口に放り込んだ。
 
 
 
  


 
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