HANA

 「紫陽花って、弁慶さんみたいですね」
庭の紫陽花を見つめながら、そう言って屈託なく笑う君。
移り気な心をうつすように、絶えず色を変える紫陽花は、旗色次第で平家にも源氏にもなれる僕には似合いの花だろう。
「遠くから眺めているだけだと、本当の花に気付けないの」
彼女は、まるですべてを見透かすように、まっすぐな瞳で言葉を続ける。
「だから、傍にいるって決めました」
その笑顔が、咎人の僕には少し眩しくて、いつものように笑顔でやり過ごす。

君はきっと、どんな穢れに触れても白いままの花。

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