懐かしいモノ発掘したw
4年前くらいにやったやつだと思うんだけど。
・65文字以内
・説明的な文章も避け、描写から「場面」が想像できるようにする
・ストーリー性をつける
っていう縛りがあるお題でした。
今新しくやり始めたらまた違う感じになるんだろうなと思いつつ、懐かしかったので貼っときますw
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文章修行家さんに40の短文描写お題 をお借りしました
http://cistus.blog4.fc2.com/
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01.告白
「いっそ魔王が蘇ればいいと思ったよ」
かつての勇者は、しわがれた声でそう言うと伏せた顔を両手で覆った。
「必要とされていたかったんだ」
02.嘘
彼はそこに座り込んだまま、神妙な顔で己の考察を述べた。
「こおりがとけたのかも」
しかし、布団に描かれた地図模様の原因は考えるまでもない。
03.卒業
消去シマスカ?
無機質に問う携帯画面の上を紅い爪先が彷徨う。
1つ息を吐き、選んだのはYES。
後は軽やかにヒールを鳴らして歩き始めた。
04.旅
隣の席で泣いていた筈のおかっぱの幼女は、はしゃいだ声をあげつつ母親に手をひかれていた。
彼女らも六文銭を渡し舟に乗り込む。
次は私の番。
05.学ぶ
頭痛に耐えて身を起こすと、視界が揺れるような錯覚を覚える。
彼女は口を掌で覆い、浅い呼吸で吐き気をやり過ごしながら、人生初の禁酒を誓った。
06.電車
押し込められた人の群れがアナウンスに促されてどっとホームへ降りていく。
息をついた僕は、ようやく空いた目の前のつり革に手を伸ばした。
07.ペット
目覚ましを止め布団を引き寄せた君は、とろりと再び瞼を閉ざす。
僕は音もたてず出窓に飛び乗り、寝顔めがけてダイブした。
08.癖
隣席の女は紅茶が運ばれてきても爪先で卓上を叩き続ける。
鬱陶しさを覚えながら珈琲を口にした男の靴先は、絶え間なく床を叩き続けていた。
09.おとな
笑顔の青い熊の絵が指標だ。その隣に並び、拳を握りしめて係員のジャッジを待つ。
「OKでーす」
彼は足取り軽やかにコースターに乗り込んだ。
10.食事
彼は辿々しい手つきで選別を始める。例外など許さないと言わんばかりの厳しい眼差しだ。
やがて皿の隅に形成されたのは、人参グループだった。
11.本
自室の床に座り込んだ彼女は視線を落とし、分厚いそれを真剣に繰り続ける。
「この本だったはず」
しかしいつかの千円札は一向に見つからない。
12.夢
ステンドグラスから射す光が古びた机や祭壇を淡く照らす。
賛美歌も祝福の声すらもない中で二人きり、彼と僕とで神様が認めない愛を誓う。
13.女と女
「だって格好よかったし」
その答えに胡乱げな視線を送れば、カーネーションをいける手を止め口元を綻ばせた。
「もてたのよ? 若い頃のパパ」
14.手紙
白く細い指を柵にかけ、揃えた靴の下に置いたそれをもう一度だけ振り返った。
書き漏らした名はない。
密やかに笑んだ少女は、宙に身を投げた。
15.信仰
雲間から差す一筋の光は、彼方からの慈悲にも救いにも見えた。
焦がれるようにそれを見遣った男は唐突に膝を折って呻く。
まだ、届かない。
16.遊び
「後ろの正面だあれ」
幾度繰り返しても鬼が変わらない様を眺めつつ煙草を燻らす。
「ああも当たらないもんかね」
「当たってるのが問題なんすよ」
17.初体験
鼻の奥が痛い程にツンとして、涙が滲む。
歯がみする思いで飲み下した彼は、目の前に残る鮪を箸でめくり、シャリの上のそれを丁寧に除いた。
18.仕事
眼前に広がる豊かな金色の実りが風に揺れる。
その直中でボロを纏い腕を大きく広げた彼はじっと立ち尽くし、空腹の小雀達を牽制し続けていた。
19.化粧
唇を彩るコーラルピンクは春の新色だ。
鏡の中の密やかな笑みは、階下で響いた「ただいま」の声に色を失う。
彼は急いでそれを拭い落とした。
20.怒り
彼は息を吐き、静かに扉を閉ざして振り向いた。
口元に笑みを湛えながらも、視線は射るような鋭さだ。
「私のプリンをご存じありませんか?」
21.神秘
虹色のカーテンはゆったりと空を揺蕩う。
空間ごと切り取られていくような心許なさを感じた瞬間、繋いだ彼の指先にきゅっと力が込められた。
22.噂
獣人は人を喰らう凶暴な野蛮人。
そう聞いた筈だ。
しかし、小首を傾げる様は愛らしく、いたって普通の少女だ。
頭上に狼のような耳がある以外は。
23.彼と彼女
だって、と唇を尖らせ空いた器をよける。
次の皿のケーキをうっとりと見つめ「別腹だもん」と宣った。
「デザートバイキングで言う台詞かよ」
24.悲しみ
「そんな泣くなよ。俺がいるだろ」
腕の中の彼女は、身を捩り声を張り上げるばかりだ。
「ママもトイレくらい一人で行きたいんだと。な?」
25.生
「機嫌はどう?」
ノックした途端、強烈な一撃が臍の辺りに響く。
一瞬顔を顰めた彼女は、目を細め愛おしげに己のまろやかな腹を撫でた。
26.死
画面に流れていく緑の山は、徐々にその数を減らしていく。
不規則な電子音は少しずつ間隔を広げ、ついにはけたたましく生の終わりを告げた。
27.芝居
「だいじょぶか?」
受話器の向こうで小さく息を呑んだ気配。なのに彼女は「全然平気」と殊更明るい声を響かせた。
「ばーか。バレバレだっつうの」
28.体
二人を隔てたそこを辿る感触に、戸惑いすら霧散していく。
指先でシーツを握りしめても、探るように彷徨う舌と指先の追求からは逃れられない。
29.感謝
揃いの制服ではしゃぐ少女達は突然のそれに小さく悲鳴をあげ、靡く髪を抑える。
「スパッツかよ」
男は舌打ちしながら自然への感謝をとりやめた。
30.イベント
炬燵に顎をのせ、遠く厳かに響く音を待つ。
白組の勝利を宣言した賑々しいテレビは、静かな雪の寺院からの中継に切り替わった。
あと、15分。
31.やわらかさ
香ばしい匂いがたちこめる中、オーブンから取り出した狐色のそれにそっと触れた彼は深く溜息を落とした。
バケットとしては明らかに失敗だ。
32.痛み
白い布に包まれた小さな箱を抱きしめる。
腕の中のぬくもりは単なる余熱だとわかってはいたが、徐々に失われていく温度がただ悲しかった。
33.好き
笑うばかりの俺を不満げに見上げるその背にはランドセルがあった。
セーラーがブレザーになっても諦めなかった彼女は、今日白無垢姿で隣に並ぶ。
34.今昔
小気味よいチョークの音が古の恋歌を綴る。
私の視線など知らぬ顔で31文字の意味を説く彼に、机の下からひそりと放課後の約束を送信した。
35.渇き
卓上にぽつんと置かれたそれが、時間の経過と共にあるべき姿へと変貌しているのは疑うべくもない。
3分後。蓋を捲れば本日の夕食開始だ。
36.浪漫
明滅を繰り返す儚い光が、夜の河原に幾つも飛び交う。
「綺麗」
「でも、虫だぞ?」
「なんでそう……っ」
続きは彼の唇に柔らかに封じられた。
37.季節
真っ赤な目をこする少女の隣で、つり革につかまる男が派手なくしゃみを響かせた。
同士らしき装備の者は多いが、μ単位の敵に皆防戦一方らしい。
38.別れ
「知ってた」
カラリと笑った彼女はワインを飲み干し、グラスの縁の紅をさりげなく指先で拭う。
平静を装ったのは、せめてものプライドだった。
39.欲
薄紅に色付く双丘が、甘く熟れた香を放つ。
誘われるように伸ばした指先が瑞々しいそれに触れた瞬間、決めた。
減量は明日からにしよう。
40.贈り物
ようやく会えた彼女は両の掌を握りしめ、あくびをしている。
その瑞々しい桃のような頬を恐る恐る指でつつきながら呼び掛けた。
「パパだよ」