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ベットの上に居るこの部屋の新しい住人を前に、つい頬が緩む。
体育座りの膝の上に引き寄せて、鼻と鼻を合わせてとぼけた顔を覗き込んだ彼女は、そのままぬいぐるみをぎゅうと抱きしめた。
頬にあたるやわらかな感触を感じながら、唇に触れた乾いた感触を思い起こす。
彼が想ってもいない相手でも平気でソウイウコトが出来る男だと知ってはいたけれど、カメを掴んで後部座席に放って見せるなどいちいちそれらしく振る舞うから、こっちはわかっているのにうっかり勘違いしそうになる。
それすらも手の内かと思うと悔しいのに、いっそ信じて、騙されてしまえばいいじゃないかなんて思ってしまいたくなるのだ。
目を閉じて、溢れ落ちるのは溜息ばかりだ。
「……増やさないようにしていたのに」
迷子のような頼りなげな視線を、真っ黒な人工物の瞳が黙って受け止めていた。
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