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想いなら耳を寄せても囁かず 暴かれるのを待つ真珠貝

海面の光に焦がれる蒼き夜 鰓の呼吸を忘れた魚

「ママ、ゆめがさいてる!」吾子の指す先で 夢見るように香る紅梅

まだ僕をどこか信じていない君 湖底の月を探して潜る

不協和音笑顔ひとつで転調す いたちごっこの放課後遊戯

耳を打つそれが最期の生でした満つるをやめた月が堕ちた日

黒猫の打ち捨てられた骸ひとつ たむけの花ぞ雪降り積もる

痴話喧嘩 犬も食わないやりとりに 食いつくように聞き耳たてる

保育園門をくぐれば名の消えて誰某のパパ誰某のママ

肉まんを分け合うようにはいかなくて恋と友情秤にかける

五線譜を奏でるような指先が探しているのは夕べの秘密

引力の及ばぬ場所まで後ずさる 月になれない意気地なしの恋

オレンジのサンダーソニアが玄関に灯りて揺れる君がいた跡

背伸びしてひとりで始めた恋でした 音にも出来ず泡にはなれず

いつまでも折り目をつけてはおけなくてそれでも抜けないいつかの栞

密になり蜜になりゆく言動に絡め捕られる週末を待つ

流行とアイデンティティと無個性を君はおりこむスカートの丈

月木金 ゴミ収集車はやってきて 心の澱は燃やせますか?

放課後の階段一気に駆けおりる キミにさよなら言うためだけに

真夜中の空へと向かう犬の鼻しばし佇み月の香を嗅ぐ

青色の蝶にとどめを刺すように縫い止められたあの日の台詞

母性をも容易く振り切るニュース見て傍らの子を抱き寄せてみる

身籠もりて螺旋に深く穿たれた母性という名の本能を知る

慣性の法則のようにぐずぐずと終わりに向かうふたりの時間

天空の丸窓見つめ君想う今すぐ逢いたいいつだって触れたい

馬上より眼下の眺望見渡せば我一時の支配者となる

君の目も紡ぐ言葉も透明で透明という色を僕は知る

細胞のひとつひとつがただ恋ふる あなたがすき でいっぱいになる

ことの葉の鋭き刃となりうるを知りて飲みこむ残酷な人

閉じた輪を巡る木馬の背に揺られサヨナラを聞く決心をする

放課後に宣戦布告のキスをする そういつまでも子供じゃないよ

新星座 君との相性見比べて 今日から僕は牡羊座になる

偽善でも善でも愛でも同情でも触れた指先はただ温かい

恋消えて惜しからざりし時間さへありをり侍り「今忙しい」

明け方の蒼の世界に陽の射して塗りかえられる昨日のつづき

遙かなる時空の彼方に飛び去りし二度とは戻らぬ朱鷺色の羽

洗濯機終わったよって鳴いている聞こえないふりだって寒いんだもん

制服で無垢な少女を擬態する無邪気な笑みの下で微笑む

目玉焼きにソースをかけちゃう僕だけど共白髪までひとつよろしく

夜明け前グンと気温が下がるのとつまりは一緒と笑い飛ばす君

潮騒に置き去りにされた海星は空を見上げてじっと見上げて

チューリップ親指姫のみた夢を抱えたままのゆりかごゆれる

チューリップしどけなく散る花びらは脱ぎ捨てられた昨日のさなぎ

花びらの開ききらない鬱金香 躊躇うように恥じらうように

鬱金香の花弁のごとく滑らかな肌、色づいてあえかに燃ゆる

悪夢から放り出されて真夜中の秒針響く君に寄り添う

シナプスで繋ぎ全身駆け巡る思考回路解析不能

二重螺旋原始の海を駆け下りて絡まり貪り交じり合う熱

二重螺旋ミトコンドリアの見る夢は君に抱かれて太古へ還る

おさかなをおかさなと呼ぶおさなごはキウイもキュウリも両方キュウイ

残り香は容易くぜんまい巻き戻しブリキのバスは君へと走る

身の内で飼う月青く制服のサナギの中で羽化を待つ蝶

寒椿落ちる速度と裏腹にゆうるりと朽ち朽ちて果ていく

人肌を恋ふるだけの夜 寒椿 滲むことなく雪、緋(あけ)にす

夕間暮れ少女と娼婦の境目に立つ君の髪さらりとほどく

運命を繋いでいるのは赤い糸あなたを縛る薬指じゃない

十二支に入り損ねた猫の仔のこの上もなく長閑な寝顔

送信のボタンを押せば待つ向きに流れ始める焦がれつづける

めぐる春おいてけぼりの羊雲 還る日溜まり求めて泳ぐ

核心をつけないままの関係は 触れれば溶ける雪月花のごと

甘栗を剥いたそばから子のせがむ その笑みを食む 親という生き物

頼りなく浮かぶ真昼の月朧 隠れて堕ちることも叶わず

パペットのぎこちなく踏むステップは あの子次第の拍動に似て

細る月 為す術もなく 消えるなら いっそ貫け その切っ先で

2・14 チャイムのたびにさざめいて あの子は誰に 花いちもんめ

「繋いでいい?」 そのひと言が言えなくて 「寒いね」ばかりをただ繰り返す

ぷくぷくと笑いながら溶けていく角砂糖も僕の心も

春風を恋しがる指絡め取り 凍る月夜を口実にする

冬の海 凍てつくことのない波は うねり渦巻き 白く砕ける

涼風に 媚薬溶かした 絹の夜 妙なるしらべ 我のみぞ知る

やわ肌に 咲く花びらや 夢の痕 まどろむ君に 月とどめけむ

春の香を まといて揺れる薄紅を 我が花がため 捧げ給ふや

いつよりかとほごゑほのかしづごころにのわきわたりて君を浮かぶる

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雨音や とけゆく雫 衣手の 淵に惑ひて 月ぞ知らにす byことは

思ひかね 涙に乱る 我が身より 雲隠るらむ 君の面影 by智雅さま

*上の歌をお贈りしたところ、下の歌をいただきました。

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愛しさを 伝えきれない僕がいて 不安に揺れる 君の眼差し

オセロくらい  勝たせてほしい 夜は更けて 勝率ゼロの 恋のかけひき

君が指 つま弾かれたき 我が居て ふたりの音色 いまだ練習曲(エチュード)

ことの葉の 寄る辺もなしに 漂えば 溶かすため息 照らす月かな

得たものと なくしたものを 振り返り 大晦日(おおつごもり)の 平気なつもり

ことの葉の 寄る辺もなしに 漂えば 月光のみぞ知る 「君が好き」

口紅の 赤がささやく 鏡面の アナタハカレニフサワシクナイ

紫陽花の 移り気なると 人の言う 君色にただ 咲くだけなのに

夕映えに 浄土うつして 月登る  帰ろう 還ろう ドコヘカエロウ?

スキ・キライ・・ 花弁に訊ねる 夜は更けて 今日は恋愛決戦前夜

一年(ひととせ)は 君と過ごした ヴィンテージ 澱(おり)沈むまで 開けずにおこう

新色のリップは気づきもしないのに カゼには気付く 君の横顔

「バイバイ」と 幼子のふる小さき手 「明日またね」とたたずむ尾花

暗闇に 時間(とき)のぜんまい 巻き戻す たゆたう想い 灯籠流し

さよならの カードは君の手の中に オートリバース かなわぬ想い

オレンジの 箱に揺られて くぐりゆく 暑さ濃縮 100%

幽玄の 生に浮かべる ほのあかり 心もとなく 灯籠流し

かささぎの 橋すべりゆく 新幹線 ただ待ちはしない イマドキの織り姫

「背の骨は 翼の痕」と 微笑う君 堕ちた天使を シーツでくるむ

いま一度 呼びかけてみたい ひとなれど・・・ ひとり迎える 初めての夏

沈黙の 優しき時間 敷き詰めて 膝に感じる 幸福の重さ

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